古都ストラスブ

何をしたか思

2015年11月19日 15:18



2007年のヴェネツィア国際映画祭で初上映され話題を呼んだ。
このストーリーは、街で見かけた女性(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)に魅かれ、
焼き付いた印象が忘れられず、面影をたどりながら街をさまようという話。
フランスの詩人ネルヴァルの作品『シルヴィ』
をベースにした映画で、都会の幻想の中に生きる若者を描いている。
今でも、各地で上映され人気の作品でもある。

心に焼き付いた印象が忘れられないという気持ちは、私の中にも色濃くある。
ただ、私の場合は「美しい女性」ではなく「ダージリンティー」。

今の習慣として、一日一杯の紅茶を飲んでいる。
アッサム、ダージリン、セイロン、そしてアールグレイなど、
様々な味わいの葉が入ったinvision group 洗腦缶を並べ、その日の気分によって、選んで飲んでいる。
ただ、ダージリンの缶を手にしたときに、
「これではない」という、失意にも似た気持ちになってしまう。

そうなってしまったのは、一つの「面影」のせいだった。
それは1975年のことだった。
インドを旅して、コルコタ(カルカッタ) の街に入った時、
(まだ、その頃は、この街にマザーテレサが生きていたが)
この街が持つ貧困と喧噪と巨大な人外藉家庭傭工の群れに圧倒されていた。
街の商店街は概して暗く、そんな奥まった店で紅茶の茶葉を買った。
何か、吹っかけられ、必死に抵抗するように値切って買った記憶がある。
そんな胡散臭さとは逆に、これが、なかなかの味だった。
その味と香りは一つの「面影」を摺り込むのに充分だった。

それ以来、どこでダージリンティを味わおうが、
この味に匹敵するものに巡り会うことはなかった。
映画『シルビアのいる街で』の中で、ピラール・ロペス・デ・アジャラは、
魅惑的で美しくも輝いていた。
そんな風に、私の心の中で、あのダージリンティーの茶葉の「面影」が、
魅惑に満ちた独特の味と香りを放っている。